2017年

4月

23日

道標(舞台『100000羽の鳥』、テキスト)

それは巨大な張りぼて、思考する皮膚の継ぎ接ぎ、乱雑な、手作りの、かろうじてそれと解る人体のフォルム。枝分かれし、また繋がる道のような線、模様、深い森の闇、袋小路、膨大な数の旅のガイド本、道を教えてくれるどころか、迷わせ、惑わせ、誘い、寄り道させる、綺麗な、あるいは煤けた本がそこかしこに散在する人体地図。腹も背も眺望できるよう、開き、伸ばし、平面に貼り付けられる。新大陸への近道が発見され、全く別次元の事象が線で結ばれ、共謀し、新たに悪だくみを仕掛け、不安にさせる。誠実さ、道徳心、博愛精神には、嫌疑がかけられ、ありきたりの結論に達すれば、封印されるか、フィクションの形をとって歪められ、巧みに偽装され、真意が隠される。深い森で迷子になったら、それを好機と考え、留まって悪の化身になる修行をさせられる。不可解な犯罪や、不合理な事態に対抗する術の会得。真偽が逆転するほどの演技。闇に溶け込み、より攻撃的な方向に導かれる。やがて地図上に一本の太い線が現れ、大きくうねりだす。

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